前回は、おうちテイクアウトの利益について、実際の数字を使いながらお話ししました。
「これなら、自分にもできるかもしれない」
そう思ってくださった方も多かったのではないでしょうか。
大きな店舗を持たず、自宅の一部を使って始められる。
家賃や人件費を大きく抱えず、商品の利益を残しやすい。
おうちテイクアウトには、確かに大きな可能性があります。
ですが今回は、少し厳しい現実についてもお話ししたいと思います。
実際におうちテイクアウトを始めた方の中には、半年、1年と続けていける方もいれば、途中でやめてしまったり、販売日数を減らしたり、活動を縮小してしまう方もいます。
その差は、商品の美味しさではありません。
技術が足りないからでもありません。
途中で続けられなくなる大きな理由。
それは、
「一人で抱えることの苦しさ」
です。
最初の数か月は、楽しくて仕方がありません
おうちテイクアウトを始めたばかりの頃は、毎日が新鮮です。
自分のお店を始めたという充実感があります。
「始めたからには頑張ろう」
という気合もあります。
何より、自分が作った商品をお客様が買ってくださり、
「美味しかったです」
「また買いたいです」
と言ってくださる。
その喜びは、とても大きなものです。
新しい商品を考えることも楽しい。
包装を考えることも楽しい。
Instagramに投稿することも、最初はワクワクします。
ですが、3か月、半年と続けていくうちに、少しずつ重たくなってくるものがあります。
それが、孤独です。
分からないことがあっても、誰にも聞けない
一人で開業すると、何か問題が起きたときに、すべて自分で判断しなければなりません。
シフォンケーキの焼き上がりが、いつもと少し違う。
季節が変わったら、生地の状態が変わってしまった。
新しい味を作ってみたけれど、これで本当に商品として出していいのか分からない。
「この作り方で合っているのかな」
「もっと美味しくする方法があるのではないかな」
そう思っても、すぐに答えてくれる人がいません。
もちろん、インターネットで調べることはできます。
ですが、書いていることが人によって違うこともあります。
自分の商品や、自分の厨房、自分の販売方法に合っている答えなのかも分かりません。
結局、試して、失敗して、また試す。
その繰り返しになります。
商品作りだけではありません。
「この価格でいいのかな」
「値上げしても大丈夫かな」
「売れ残った商品をどうしよう」
「お客様からこんな連絡が来たけれど、どう返したらいいのだろう」
小さな判断が、毎日のように出てきます。
一つひとつは小さなことでも、全部を一人で決め続けると、少しずつ心が疲れていきます。
定休日なのに、頭の中はずっと仕事
お店がお休みの日でも、頭の中ではずっと仕事のことを考えています。
次は何を販売しよう。
今度は何を投稿しよう。
予約が入らなかったらどうしよう。
材料費が上がったけれど、価格をどうしよう。
売上が下がったらどうしよう。
本来、お店のことを考えるのは悪いことではありません。
経営者であれば、考えることは必要です。
ですが、その中身が、
「次は何をしよう」
という前向きな考えではなく、
「どうしよう」
という不安ばかりになってしまうことがあります。
この状態が続くと、心に余裕がなくなっていきます。
家族に話しかけられても、つい強い言い方をしてしまう。
子どもの話を聞きながらも、頭の中では予約数を数えている。
家族から、
「そんなに大変なら、やめたら」
と言われてしまう。
自由になりたくて始めたはずなのに、いつの間にか仕事に追われている。
夢だったはずのお店が、自分を苦しめるものになってしまう。
これが、おうち開業で起こりやすい「孤独という壁」です。
Instagramを開くたびに、自信をなくしてしまう
今は、個人でも簡単に発信できる時代です。
InstagramやYouTubeを使えば、自宅にいながら全国の人に商品や活動を知ってもらうことができます。
これは、15年前や20年前にはなかった、大きなチャンスです。
活動的な女性が増え、自分の得意なことを仕事にできるようになったことは、とても良いことだと思います。
ですが、その一方で、競争も激しくなりました。
Instagramを開けば、きれいなお菓子の写真がたくさん出てきます。
素敵なラッピング。
おしゃれな厨房。
たくさん並んだ予約商品。
楽しそうに働いている姿。
そのような投稿を毎日見ていると、
「私には、こんなに上手にできない」
「私のお店は、誰にも見てもらえていない」
「同じ時期に始めた人の方が、ずっと売れている」
と、自信をなくしてしまうことがあります。
本当は、目の前のお客様に喜んでもらうことが一番大切です。
ですが、
「何人に見られたか」
「何件いいねがついたか」
「フォロワーが増えたか」
という数字ばかりが気になり始めます。
そして、目の前のお客様より、画面の向こうの知らない人を追いかけるようになってしまいます。
これも、今の時代の孤独の一つです。
たくさんの人とつながっているように見えるのに、相談できる人は誰もいない。
毎日発信しているのに、自分だけ取り残されているように感じる。
SNSは便利ですが、使い方を間違えると、心を削る道具にもなります。
「差別化しなさい」と言われて、さらに苦しくなる
売上が伸びない。
投稿をしても見てもらえない。
自分の商品に自信がなくなってきた。
そのような状況を変えようとして、マーケティングを学んだり、コンサルタントに相談したりする方もいます。
すると、多くの場合、このように言われます。
「オリジナル商品を作りましょう」
「ほかのお店と差別化しましょう」
「あなたにしかない強みは何ですか」
もちろん、これらは事業を続ける上で大切なことです。
ですが、すでに誰かから技術やレシピを学び、その商品で販売を始めた方ほど、
「自分だけのものを作りなさい」
と言われると、苦しくなることがあります。
同じ講座で学んだ人がいる。
同じレシピを使っている人がいる。
似た商品を販売している人もいる。
その中で、
「私だけの違いを作らなければ」
と考える。
すると、レシピを一から作り直そうとします。
今まで使ったことのない素材を試します。
見た目を変えます。
商品名を変えます。
包装を変えます。
投稿の雰囲気も変えます。
ですが、何を変えても、
「これで本当に差別化できているのかな」
という不安は消えません。
レシピも自分で作る。
味も自分一人で決める。
価格も自分で決める。
開業の判断も自分一人でする。
結局、オープン前日はほとんど眠れず、準備を続ける。
そして、何にも特化できないまま、スイーツを作ること自体が苦しくなってしまう方がいます。
好きだったお菓子作りが、
「売らなければならないもの」
「投稿しなければならないもの」
「誰かと比べられるもの」
に変わってしまうのです。
私も、パンを販売していた頃に経験しました
私自身も、同じような時期を経験しています。
2017年頃、私はパンを中心に活動していました。
その頃は、ずっと一人で試作をしていました。
レシピを考え、材料を選び、何度も作り直す。
商品として出せる状態になるまで、自分だけで判断する。
販売を始めた後も、
「次は何を作ろう」
「どうしたら売れるだろう」
「この価格でいいのだろうか」
と、ずっと一人で考えていました。
近くのお弁当屋さんに商品を置かせてもらったこともあります。
マルシェに誘っていただき、販売したこともあります。
パンとシフォンケーキの両方を、一人で作って販売していた時期もありました。
ですが、当時の私は、販売という仕事のやり方をきちんと分かっていませんでした。
商品を作ることはできる。
でも、販売を続ける仕組みは持っていない。
相談する相手もいない。
誰かと一緒に考える環境もない。
「誰かに相談したい」
「誰かと一緒に進められたら」
そう思ったことが、何度もありました。
そして結局、私が一人で行っていたパンとシフォンケーキの販売は、長くは続きませんでした。
一年ほどで、その販売の形を終えることになりました。
あの頃の私は、技術がなかったわけではありません。
作ることが嫌いだったわけでもありません。
一人で全部を背負う仕組みに、限界が来たのです。
技術を学ぶだけでは、開業は続きません
開業しようと思ったとき、多くの方は、まず技術を学びます。
シフォンケーキの作り方。
パンの作り方。
焼き菓子の作り方。
もちろん、技術は必要です。
お客様にお金をいただく以上、安定した商品を作れることは大前提です。
ですが、技術は開業に必要なものの一部分にすぎません。
実際にお店を始めると、ほかにもたくさんの仕事があります。
商品開発。
材料の仕入れ。
原価計算。
価格設定。
食品表示。
予約管理。
SNS発信。
写真撮影。
お客様対応。
クレームやトラブルへの対応。
売上管理。
次回販売の企画。
これらすべてを、誰にも相談できない状態で一人で続けるのは、本当に大変です。
私の開業は、孤独からのスタートでした。
今、皆さんがこれから挑もうとしていることを、私は一度通り抜けてきました。
だからこそ分かることがあります。
続けられるかどうかを決めるのは、本人の根性だけではありません。
頑張れる人かどうかでもありません。
困ったときに相談できる環境があるか。
判断に迷ったときに、一緒に考えてくれる人がいるか。
同じ方向を向いて進む仲間がいるか。
この環境があるかどうかが、大きな差になります。
一人で始めても、一人で続ける必要はありません
おうちテイクアウトを始めるときは、一人で始める方がほとんどです。
自宅の厨房で、自分の商品を作り、自分でお客様に渡す。
その小さな形が、おうちテイクアウトの良さでもあります。
ですが、
「一人で始めること」と、
「すべてを一人で抱えること」は違います。
小さく始めても、相談できる人は必要です。
商品について質問できる場所。
販売について相談できる場所。
困ったときに、
「それなら、こうしてみよう」
と言ってくれる人。
うまくいったときに、一緒に喜んでくれる仲間。
その存在があるだけで、続けやすさは大きく変わります。
一人で何でもできる人が、長く続くのではありません。
必要なときに、周りの力を借りられる人が続いていくのだと思います。
おうちテイクアウトをやめる一番の理由は、孤独です
今回お伝えしたかったのは、おうちテイクアウトを途中でやめてしまう一番の理由は、味でも、技術でもないということです。
一人で考え続けること。
一人で決め続けること。
一人で不安を抱え続けること。
その孤独が、少しずつ心を疲れさせます。
これは、特別な人だけに起こることではありません。
一人で始めた人なら、誰にでも起こる可能性があります。
私自身も、その道を通ってきました。
だから私は、
「好きなら頑張れます」
「夢があれば続けられます」
とは言いません。
好きな気持ちだけで、経営を続けることはできません。
夢を守るためには、支えてくれる仕組みが必要です。
次回は、
「美味しいだけでは勝てない時代に、なぜ差別化という考え方が苦しくなるのか」
について、もう少し深くお話しします。
差別化しようとして、商品作りに迷ってしまう。
オリジナルを作ろうとして、何を作ればいいか分からなくなる。
自分らしさを探し続けて、疲れてしまう。
その理由を、私自身の経験も交えながらお伝えします。
YouTubeチャンネルでは、おうちテイクアウトの始め方や、長く続けるために必要なことを、全12話でお届けしています。
ぜひチャンネル登録をして、次回もご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
konayukiの直子でした。
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