「美味しい」だけでは勝てない。差別化を一人で背負うことの罠(わな)

自宅から始めるシフォンテイクアウト店の育て方

前回は、おうちテイクアウトを途中でやめてしまう大きな理由は、味や技術ではなく「孤独」だというお話をしました。

商品について分からないことがあっても、相談できる人がいない。

価格も、販売方法も、SNS発信も、すべて自分一人で決めなければならない。

そんな状況を何とか変えようとして、マーケティングを学んだり、コンサルタントに相談したりする方もいます。

すると、必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。

「ほかのお店と差別化しましょう」

「オリジナル商品で勝負しましょう」

「あなたにしかない強みは何ですか」

もちろん、事業を続けるために、差別化は必要です。

どこにでもある商品を、どこにでもある見せ方で販売していては、価格で比べられやすくなります。

ですが、私は自分自身の経験を通して、差別化という言葉には一つの大きな落とし穴があると感じています。

それは、差別化をすべて一人で背負おうとすると、想像している以上のお金と時間がかかることです。

今回は、実際に差別化の道を通ってきた私の経験から、その現実をお話しします。

一人で差別化するなら、専門家の力は必要です

最初に、正直なことをお話しします。

一人でレシピを開発し、一人で商品を作り、一人で差別化して開業するのであれば、コンサルタントや専門家の力は必要だと思います。

仮に、コンサルタントへ50万円を支払うと聞いたら、どう感じるでしょうか。

「高い」

「そこまで払えない」

と思う方もいらっしゃるでしょう。

ですが私は、内容によっては50万円でも安いかもしれないと思っています。

なぜなら、私自身が本気で事業を育てようと決めてから、学びや自己投資に使ってきた金額は、合計すると1,000万円ほどになるからです。

もちろん、一度に1,000万円を支払ったわけではありません。

顧問コンサルティング。

マーケティング。

写真。

ホームページ。

デザイン。

文章。

経営。

ブランディング。

その時々で自分に足りないものを学びながら、7年ほどかけて少しずつ投資してきました。

中には、とても役立った学びもあります。

反対に、

「今の私には必要なかったかもしれない」

と思うものもありました。

ですが、そこまでお金と時間をかけたからこそ、分かったことがあります。

差別化は、お金を払えば誰かから完成品を渡してもらえるものではありません。

誰かに、

「あなたの強みはこれです」

と言われただけで、急に選ばれる商品が生まれるわけでもありません。

差別化とは、それまでに自分が積み上げてきたものの上にしか生まれないものなのです。

私が本気で教室事業を立て直したとき

私が本気で事業を立て直そうと決めた頃、当時としてはまだ珍しかった、教室集客を専門とするコンサルの先生に付いて、開業のノウハウを長期間かけて学び始めたんですよね。

そのとき、私には一つ、大きく救われたことがありました。

それは、すでに自分の得意な商品を持っていたことです。

コンサルを受ける前から、私は何年もシフォンケーキを作っていました。

デザインを取り入れたシフォンケーキ。

季節の果物を使ったシフォンケーキ。

食べた方から、

「生クリームが入っているみたい」

と言われる、独特のしっとりした食感。

誰かに言われて急いで作ったものではありません。

好きで作り続け、失敗しながら自分で研究し、少しずつ積み上げてきたものでした。

だから、当時の私に必要だったのは、

「ゼロから売るものを探すこと」

ではなかった、ということです。

すでに自分が試行錯誤して開発してきたシフォンケーキという得意分野を、どのように見せ、どのように伝え、どのように事業として育てるか。

そこを整えることが課題だったのです。

これが、私にはとても合っていました。

ゼロから何かをひねり出すのではなく、すでにあるものを発展させていく。

その作業は、苦しいというより、むしろ楽しいものでした。

止まっていた歯車が、一気に回り始めたような感覚でした。

1年かけることを、3か月で進めました

当時、コンサルタントの先生からは、

「普通は、1年くらいかけて、じっくり育てていくものです」

「予定が早いですね。それでもしますか?」

と言われました。

私は、、迷わずこう、答えましたね!

「はい、やり切ります!

もうこれ以上、貧乏生活を続けるわけにはいきません

と。

ゆっくり考えている余裕はありませんでした。

有言実行!

もうね、まだ見ぬ未来を思い描きながら、とにかく無我夢中でした。

3か月ほどの間に、

残りのレシピ開発。

ホームページ制作。

教室や商品のデザイン。

Instagramの再構築。

発信内容の見直し。

これらを一気に進めました。

今振り返れば、かなり無理をしていたと思います。

ですが、それでも進められたのは、私の中にすでにシフォンケーキという土台があったからです。

何を売るのかが決まっている。

どんな食感を届けたいのかが決まっている。

誰に喜んでほしいのかも、少しずつ見えている。

その状態で、見せ方や売り方を整えたからこそ、短期間でも事業が一気に進みました。

当時、米粉シフォンの専門店はほとんどありませんでした

当時、周りを見渡してみると、競合になりそうな教室やお店は、日本全国で私が把握できる範囲では、1~2件ほどでした。

米粉を扱っている場所があったとしても、米粉のシフォンケーキだけを専門として、これほどの数を本格的に事業をしている人は、ほとんど見当たりませんでした。

だから私は、米粉のシフォンケーキ専門という場所で、先に立つことができると思いました。

競合が少ない

専門としている人も少ない。

その中で、私はシフォンケーキだけを発信し続けました。

周りから見れば、

「またシフォンケーキの話をしている」

と思われるくらい、シフォンケーキに絞りました。

競合が少ない=ニーズが無い

これはこれで、本当の意味で大変な状況でもありましたよ。

欲しい人が居ないから、なかなか探されないんですよ。

だからこそ、

「発信」

という手段がどれほどの効果を発揮するのか、体を張って挑戦し続けたわけです。

※当初の私の発信を振り返ると、それはも~う、自信のない初々しい姿です(笑)

その結果、米粉シフォンケーキといえばkonayukiという認識を、少しずつ作ることができました。

ですが、ここで気づいていただきたいことがあります。

私が差別化できたのは、コンサルティングを受けたからだけではありません。

コンサルタントの先生が、私の代わりにシフォンケーキを作ってくれたわけでもありません。

私だけのレシピを、外から持ってきてくれたわけでもありません。

それより前に、私自身が何年もかけてシフォンケーキを作り続けていました。

誰に頼まれたわけでもなく、試作を繰り返していました。

その「自分の得意」という土台があったからこそ、専門家の助言を受けたときに、一気に形にできたのです。

土台がないまま差別化すると、お金と時間が溶けていく

差別化を考えること自体が悪いわけではありません。

問題は、自分の中にまだ土台がない状態で、

「何か人と違うことをしなければ」

と焦ってしまうことです。

今まで使ったことのない材料を取り入れる。

珍しい味を作る。

見たことのない形にする。

商品名を変える。

ラッピングを変える。

投稿の色を変える。

誰も使っていない言葉を探す。

ですが、それらを一つずつ変えても、商品の中心が定まっていなければ、

「これで本当に差別化できているのかな」

という不安は消えません。

珍しい商品を作っても、お客様が欲しいとは限りません。

見たことのない味を作っても、もう一度買ってもらえるとは限りません。

人と違うことだけを目的にすると、商品がお客様から離れていくこともあります。

そして、また別の講座を受ける。

別のコンサルタントへ相談する。

新しい資格を取る。

新しいレシピを学ぶ。

お金も時間も使っているのに、自分のお店の中心は、いつまでも決まらない。

これが、差別化の罠の一つ目です。

差別化は、飾りつけから作るものではありません。

自分が長く続けてきたこと。

人から何度も喜ばれたこと。

ほかの人より深く考えてきたこと。

簡単には真似できない経験。

そのような土台の上に、初めて生まれるものです。

差別化に成功しても、そこで終わりではありませんでした

では、差別化に成功すれば、すべてうまくいくのでしょうか。

私自身は、そうではありませんでした。

米粉のシフォンケーキ専門として活動を続ける中で、私はシフォンケーキを教える立場になりました。

受講してくださる方が増え、シフォンケーキを作れる人も増えていきました。

私が本気で指導するほど、皆さんの技術は上達していきます。

できなかったシフォンケーキが焼けるようになる。

自分の商品として販売できるようになる。

お客様から喜んでいただけるようになる。

本来であれば、それはとてもうれしいこトなはずが、、。

もちろん、最初の3年~4年は。ただただその姿を送り出すことが、心からうれしかったです。

ですが、時間がたつにつれて、私は当時作っていた仕組みの中に、大きな問題があることに気づきました。

「学んだら終わり」という仕組みを作っていました

当時の私の教室は、必要な技術を学んだら卒業し、その後は一人ひとりが自分の道へ進んでいく仕組みでした。

最初に

「粉雪シフォンを広げて下さいね」

とわくわくしながら始まる講座も、終わりになると、

konayukiには「敬意」ではなく、「気になる場所」となっていく。

認定講師制度にも、「2年」という区切りを設けていました。

2年間一緒に活動すれば、私が大切にしている考え方や、konayukiのシフォンケーキに込めた思いも、きっと深く伝わる。

そして、作れる人が増えることで、konayukiシフォンというブランドの価値も高まっていく。

当時の私は、そう信じていました。

ですが私は、その2年間の先に、

「どんな未来を一緒に作っていくのか」

という約束を、きちんと言葉にできていませんでした。

何を守りながら活動するのか。

同じ技術を持つ人同士が、どのような関係で進んでいくのか。

困ったときには、どこへ相談するのか?

一人ひとりのお店の成長と、konayukiというブランドの成長を、どうつなげていくのか。

その先の仕組みを作らないまま、私は技術を届けることを先に進めてしまいました。

善意で作った仕組みが、一人ずつ戦わせる形になっていました

結果として、学んだ後は、それぞれが独立する。

一見すると、とても自由で、受講した方のためを考えた仕組みに見えます。

ですが、その仕組みでは、卒業した瞬間から一人ひとりが自分だけの違いを作らなければなりません。

同じ技術を学んだ人がいる。

似た商品を扱う人もいる。

その中で、

「自分だけの強みを作らなければ」

「ほかの人より目立たなければ」

と、一人で考えることになります。

つまり、私が7年かけ、約1,000万円を使いながら進んできた差別化の道を、今度は学んだ方たちが、別のコンサルを付けて、一人ずつ歩く形になっていたのです。

私は、技術を渡せば、その人の力になると思っていました。

ですが、技術を渡した先に、長く安心して続けられる環境まで作らなければ、本当の意味で支えたことにはなりません。

善意で作ったはずの仕組みが、その先のことまで考えが至らず、大切な人たちを一人ずつ、差別化競争の中へ送り出す形になっていました。

これは誰かの行動が悪かったということではないと思うようになりました。

当時の私が、そこまで先を考えた仕組みを作れていなかった。

私自身の未熟さが原因です。

事業を大きくすることを急ぎ、学んだ方のその後まで守れる仕組みを作らないまま、広げてしまいました。

これは、私の中に今も残っている大きな後悔です。

「先生、もっと私たちのことも頼って」

だからといって、私は諦めたくありませんでした。

いっそ、このまま講師業を辞めようかと思った時期もありました。

そう宣言したことも、実はあったんです。

でも、その後もずっと

本当は、どのような世界を作りたかったのか。

konayukiのシフォンケーキを学んだ人たちが、一人ずつ苦しむのではなく、安心して長く活動できる形はないのか。

同じ技術を持つ人が増えることを、競争の始まりにするのではなく、ブランドの力に変えることはできないのか。

その答えを探しながら、私は一人でもがいていました。

制度を見直す。

ルールを考える。

規約を作り直す。

ブランドを守る方法を考える。

相談できる環境を作ろうとする。

ですが、そのすべてを、また私一人で背負おうとしていました。

そんなとき、仲間の一人が私に言ってくれた言葉があります。

「先生、もっと私たちのことも頼って」

その言葉を聞いたとき、私の中で何かが大きく変わりました。

私は、それまで、

「私が教えなければ」

「私が守らなければ」

「私が全部考えなければ」

「全部こたえなければ」

と思っていました。

ですが、同じシフォンケーキを大切にし、同じ未来を見たいと思ってくれる人がいる。

その人たちは、私が守るだけの存在ではありません。

一緒にブランドを育てていく仲間でもあるのです。

同じ商品を扱う人は、競い合う相手ではない。

それぞれの地域で価値を伝えながら、一緒に市場を広げていくことができる。

競争の「競」ではなく、その先にある別の形へ。

この考え方については、シリーズの後半で、さらに詳しくお話ししたいと思います。

差別化の罠は、二つあります

今回お伝えしたかった差別化の罠は、大きく二つあります。

一つ目は、土台がないまま一人で差別化しようとすると、膨大なお金と時間がかかることです。

私自身、本気で事業を目指してからの7年間で、学びや自己投資に約1,000万円を使ってきました。

その学びを生かせたのは、すでに自分の中に、シフォンケーキという得意分野があったからです。

土台のないまま、

「人と違うものを作らなければ」

と焦ると、学びや商品を増やしているのに、事業の中心は決まらないという状態になりやすくなります。

二つ目は、たとえ差別化に成功しても、その先で一人ずつバラバラに戦い続ける仕組みであれば、いつか苦しくなることです。

自分の商品を守る。

自分のお客様を集める。

自分だけの違いを作る。

これらをすべて一人で抱え続けることには、限界があります。

必要なのは、ただ人と違う商品を作ることではありません。

すでに信頼されている土台を持つこと。

迷ったときに相談できる環境があること。

同じ方向を向いて進める仲間がいること。

そして、一人のお店の成長が、ほかの誰かの脅威ではなく、ブランド全体の力になる仕組みです。

人気店になった人は、何が違ったのか

では、実際におうちテイクアウトで人気店になった方は、何が違ったのでしょうか。

特別な才能があったのでしょうか。

最初から発信が上手だったのでしょうか。

たくさんのお金をかけられたのでしょうか。

私は、そうではないと思っています。

美味しい商品を作るための土台がありました。

一人で抱え込まず、相談できる環境がありました。

そして、自分のお店だけではなく、もっと広い未来を見ながら進める仲間がいました。

次回は、実際におうちテイクアウトで人気店になった方たちの、リアルなストーリーをお話しします。

どのようなところから始め、どのように地域のお客様から選ばれるお店へと育っていったのか。

「美味しいものが作れる人」が人気店になるのではありません。

土台と、味方がある人が、人気店になっていく。

私がすぐ近くで見てきた実例を通して、お伝えします。

YouTubeチャンネルでは、おうちテイクアウトを始め、長く育てていくために必要な商品、販売、発信、仕組みについて、全12話でお届けしています。

ぜひチャンネル登録をして、次回もご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

konayukiの直子でした。


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