[自宅開業]テイクアウト開業で人気店になる人は、何が違うのか

自宅から始めるシフォンテイクアウト店の育て方

前回までは、一人でおうちテイクアウトを始めることの難しさや、差別化を一人で背負うことの重さについてお話ししてきました。

少し厳しい話が続きましたよね。

「やっぱり、私には難しいのかな」

「開業するには、特別な才能が必要なのかな」

そう思われた方もいるかもしれません。

でも今回は、反対のお話をしたいと思います。

実際に、おうちテイクアウトを始めて、地域のお客様から愛されるお店へ育てている方たちがいます。

私がすぐ近くで見てきた、konayukiで学んだ仲間たちです。

その方たちは、最初から特別な人だったのでしょうか。

お菓子作りの天才だったのでしょうか。

Instagramの発信が、とても上手だったのでしょうか。

決して、そういうことではありません。

今回は、始めた場所も、それまでの仕事も、お店の形もまったく違う3人の、リアルなストーリーをお話しします。

自宅のワイン倉庫から始まった、藤さんのお店

一人目は、埼玉県久喜市で、米粉シフォンケーキとお米のロールケーキのお店をされている藤さんです。

藤さんのお店は、大きな店舗を借りて始めたわけではありません。

ご自宅の玄関横にあった、小さなワイン倉庫。

そのスペースを改装して、お菓子を作る工房にされました。

自宅の中に立派な空き部屋がなくても、店舗を借りるほどの資金がなくても、今ある場所を工夫すれば、自分のお店を始めることができます。

藤さんのお店は、まさにそれを形にしたおうち工房です。

そして、驚くのはここからです。

お店を始めて1年目から、クリスマスケーキの注文が100台を超えました。

さらに2年目には、小さなサイズまで含めると、約250台もの注文を受けられたのです。

250台です。

大きなケーキ店でも、簡単に作れる数ではありません。

それを、自宅の小さな工房で作られました。

もちろん、一人だけで何もかも行ったわけではありません。

クリスマスケーキのお渡し日を分ける。

受け取り時間を細かく区切る。

予約や取り置きを整理する。

製造する順番を決める。

そして、ご主人と二人三脚で準備を進める。

小さな工房だからこそ、作れる数とお渡しできる数を考えながら、きちんと仕組みを整えて乗り越えられました。

ご家族がすぐ近くにいて、応援してもらいながら働けることも、おうちテイクアウトの大きな良さです。

藤さんには、すでに接客の土台がありました

藤さんには、シフォンケーキを学ぶ前から持っていた、大きな強みがあります。

以前、喫茶店で長く店長をされていた経験があるのです。

接客。

商品の提供。

予約の管理。

スタッフやお店の動かし方。

お客様に気持ちよく帰っていただくための気配り。

こうしたことを、長い時間をかけて積み上げてこられました。

ご本人は、その経験を自慢げに話すような方ではありません。

ですが、藤さんのお話を聞いていると、ちょっとした言葉や行動の中に、接客の経験が自然に表れています。

お客様が何を不安に思うのか。

どのように案内すれば分かりやすいのか。

忙しい日ほど、何を先に整えるべきなのか。

それが、体に染み込んでいるんです。

藤さんは、ゼロからすべてを作ったのではありません。

konayukiのシフォンケーキという商品に、これまでの仕事で培ってきた接客力と、お店を動かす力を重ねました。

だからこそ、お店が大きく育っていったのだと思います。

現在は、自宅でのテイクアウト販売を頑張っている仲間たちにも、藤さんの経験や元気を分けてもらいたいと考え、販売店を支えるリーダーとしての役割も担っていただいています。

人気店になった経験を、自分のお店の中だけで終わらせない。

これから始める人や、今悩んでいる人へ渡していく。

藤さんは、そんな存在にもなっています。

「笑顔の人が来る仕事」を選んだ、玄米工房さとさん

二人目は、玄米工房さとさんです。

さとさんは、もともと体にやさしいことを大切にしながら、人の体を整える仕事をされていました。

腸活の一つとして、長く腸もみの施術にも携わってこられた方です。

さらに、体の内側だけではなく、お肌のケアにも関わり、美容部員として働いた経験もお持ちです。

人の体と向き合う。

その人の不調や悩みを聞く。

少しでも心と体が軽くなるようにお手伝いする。

そうした仕事を、長く続けてこられました。

そのさとさんが、私のところへ来てくださったときに、話してくれた言葉があります。

「施術には、しんどい人が来ます。でもスイーツには、笑顔の人が来ます。そんな仕事を、仕事の中心に置きたいんです」

私は、この言葉を今でも覚えています。

体を整える仕事を否定したのではありません。

これまで大切にしてきた仕事があるからこそ、その先に、

「元気なときに会える仕事」

「笑顔で来てもらえる仕事」

「楽しみにしてもらえる仕事」

を持ちたいと思われたのです。

生米シフォンに「玄米」という自分の軸を重ねました

さとさんは現在、生米シフォンの中でも、玄米だけを使った生地を軸にしてお店を運営されています。

玄米を使った生地は、当時のkonayukiの中でも初めての形でした。

ただ教わったものを、そのまま並べたわけではありません。

体にやさしいことを大切にしてきた、さとさん自身の経験。

腸や美容に関わってきた知識。

そして、生米から作るkonayukiのシフォンケーキ。

それらを重ねて、

「玄米工房さと」

という、その方にしか作れないお店の形へ育てていかれました。

さらに、さとさんは地域のご縁にも恵まれています。

近くのイタリア料理店とのコラボレーションにも取り組み、今では地域の常連のお客様から愛されるお店になっています。

体にやさしいことを大切にしてきた、これまでの仕事。

玄米を使ったスイーツ。

地域のお店とのつながり。

一見すると、別々のものに見えるかもしれません。

ですが、さとさんの中では、すべてが一本の道としてつながっています。

人気店になるために、過去の仕事を捨てる必要はありません。

これまで積み上げてきた経験は、新しいお店を育てる材料になります。

大切なのは、過去の経験と新しい商品を、どのようにつなげるかです。

「自分がすごいと勘違いしたらいけない」と話した、あーやんさん

三人目は、親しみを込めて「あーやん」と呼ばれている方です。

あーやんさんは、konayukiのシフォンケーキを使った販売を始めてから、まだそれほど長い年月がたっているわけではありません。

これからお店を育てていく段階にいる方です。

そのあーやんさんが、以前、私にこんなことを話してくれました。

「konayukiのシフォンを食べた人は、“何これ!”って驚くんです」

「そのとき、この味の大元にどんな人がいて、どんな積み重ねがあるのか。それを、ちゃんと語れる自分でいたいんです」

そして、こうも言われました。

「自分がすごいって、勘違いしたらいけないなと思って」

この言葉は、とても大切なことを表していると思います。

すばらしい商品を販売すると、お客様は販売している人を褒めてくださいます。

「こんなものを作れるなんて、すごいですね」

「どうやって考えたんですか」

「ほかでは食べたことがありません」

そう言われたときに、すべてを自分一人の手柄にすることもできます。

ですが、あーやんさんはそうしませんでした。

このシフォンケーキが生まれるまでには、長い研究と積み重ねがある。

自分は、その技術とブランドを受け取り、お客様へ届ける役割を持っている。

その背景まで、きちんとお客様に伝えたいと考えたのです。

お店に「konayukiとは何か」を伝えるチラシを置きました

あーやんさんは、お店をスタートするときに、

「お客様から“konayukiって何ですか?”と聞かれても、困らないようにしたい」

と話されました。

そして、konayukiについて紹介するチラシを、お店に置いてスタートしました。

これだけ聞くと、小さな工夫のように見えるかもしれません。

ですが、私はとても本質的な行動だと思っています。

普通、新しいお店は、

「私の商品を信じてください」

「私のお店を知ってください」

というところから始まります。

お客様にとっては、初めて見るお店です。

どんな人が作っているのか分からない。

本当においしいのかも分からない。

安心して買ってよいのかも分からない。

つまり、信頼がほとんどない状態からのスタートです。

ですが、あーやんさんは、自分一人の話だけで始めませんでした。

このシフォンケーキには、どのような歴史があるのか。

どのような思いで作られてきたのか。

なぜ米粉や生米を使っているのか。

どれほど長い時間をかけて、今の味が作られたのか。

すでに積み重ねられてきた物語を、自分のお店に最初から添えたのです。

しかも、その物語を借りながら、自分だけを大きく見せるのではありません。

「この味を開発した人がいて、私はそこから学びました」

と、お客様に堂々と伝えられる状態で始めました。

その結果、オープンからお客様に初めてのシフォンケーキを受け入れていただき、順調なスタートを切ることができました。

ゼロから一人で信頼を作るのか。

すでに積み重ねられてきた信頼の物語と一緒に始めるのか。

この違いは、とても大きいと思います。

3人は、まったく違うところから始めています

ここまで、3人の方をご紹介しました。

①藤さんは、自宅のワイン倉庫を改装して、元カフェ店長としての人格でお店を始めました。

喫茶店の店長として培った接客や運営の経験を、シフォンケーキの販売に重ねました。

②さとさんは、腸もみや美容など、体を整える仕事から、笑顔のお客様が集まるスイーツの仕事へ進みました。

体にやさしいという自分の軸を、生米と玄米のシフォンケーキに重ねました。

③あーやんさんは、konayukiの16年間の物語を伝えるチラシを添え、すでにある信頼を大切にしながらお店をスタートしました。

工房の形も違えば、それまでの仕事も違います。

お店で届けている価値も違うのがわかりますよね。

ですが、この3人には大きな共通点があります。

共通点1.ゼロから一人で商品を作ろうとしなかった

一つ目の共通点は、ゼロから一人で商品を作ろうとしなかったことです。

商品開発。

配合の調整。

素材ごとの作り方。

失敗したときの立て直し方。

販売できるメニューの組み立て。

これらを、すべて一人で最初から作ろうとはしませんでした。

すでにお客様から喜ばれ、長い時間をかけて育てられてきた商品を土台にしました。

そして、その土台の上に、それぞれがすでに持っていた得意なことを重ねました。

藤さんは、接客と店舗運営の経験。

さとさんは、体にやさしいことへの知識と信念。

あーやんさんは、得意のスパイスと一緒に、新分野であるシフォンケーキの背景を正しく伝えようとする姿勢

同じシフォンケーキを扱っていても、同じお店にはなりません。

元になる商品は同じでも、その上に重ねる経験や人柄、地域、お客様との関係が違うからです。

前回、私は自分の土台を作るために、7年という時間と、合計約1,000万円の自己投資をしてきたとお話ししました。

この3人は、私と同じ遠回りをする必要がありませんでした。

すでにある土台を使いながら、自分にしかない経験を重ねることに力を使えたからです。

共通点2.一人で戦っていなかった

二つ目の共通点は、一人で戦っていなかったことです。

藤さんは、ご主人と二人三脚で、250台ものクリスマスケーキをお客様へ届けました。

家族に応援されながら、自宅で仕事を育てています。

さとさんは、地域のイタリア料理店とのつながりを生かし、お客様とのご縁を広げています。

あーやんさんは、分からないことを一人で抱え込まず、konayukiというブランドの背景を確認しながら、お客様へ伝えています。

自宅で始める仕事だからといって、すべてを一人でしなければならないわけではありません。

製造は一人でも、相談できる人がいる。

販売は自分のお店でも、応援してくれる家族がいる。

違う地域で活動していても、同じ商品を大切にする仲間がいる。

この環境があることで、壁にぶつかったときにも、立ち止まりすぎずに進むことができます。

美味しいものを作れる人が、人気店になるのではありません

美味しい商品を作れることは、もちろん大切です。

お客様からお金をいただく以上、品質は欠かせませんしね。

ですが、美味しいものを作れるだけで、人気店になれるわけではありません。

どれほど美味しくても、誰にも知られていなければ売れません。

売れても、一人で抱え続けて疲れてしまえば、長く続けられません。

お客様が増えても、製造や予約の仕組みがなければ、お店は回らなくなります。

人気店になっていく人には、二つのものがあります。

一つは、すでに磨かれた商品の土台。

もう一つは、困ったときに支えてくれる味方です。

「美味しいものが作れる人」が、人気店になるのではありません。

土台と、味方がある人が、人気店として続く人、になっていく

私は、それをすぐ近くで見てきました。

そして、この二つがあれば、開業前に特別な経歴がなくても、自分の経験を生かしたお店を育てることができます。

あなたが今まで経験してきたことは、お店の力になります

今回ご紹介した3人の話を聞いて、

「私は喫茶店の店長をしたこともない」

「美容や体の仕事をしてきたわけでもない」

「私には、重ねられるものがない」

と思った方もいるかもしれません。

ですが、お店に重ねられるものは、仕事の経歴だけではありません。

子育てをしてきた経験。

家族の健康を考えて食事を作ってきた経験。

人の話を聞くことが得意なこと。

季節の行事を大切にしてきたこと。

地域の人とのつながり。

写真を撮ることが好きなこと。

文章を書くことが好きなこと。

細かな作業が得意なこと。

人を笑顔にすることが好きなこと。

これまでの人生で積み重ねてきたものは、見方を変えれば、お店を育てる力になります。

ゼロから、まったく新しい自分になる必要はありません。

すでにある自分の経験を、信頼されている商品に重ねればいいのです。

その組み合わせが、ほかにはないお店を作っていきます。

自宅(おうち)工房の形は、一つではありません

今回は、実際に人気店へ育っている3人のストーリーをお話ししました。

その中で、藤さんが自宅のワイン倉庫を改装して工房を作ったという話を聞き、

「うちには、そんな倉庫はない」

と思った方もいるかもしれません。

「工房にできる部屋がない」

「自宅が広くない」

「どこを直せばいいのか分からない」

そのような不安もあると思います。

ですが、おうち工房の形は一つではありません。

使っていない和室。

玄関の近くにある小さな部屋。

自宅の倉庫。

ガレージの一部。

庭に面した窓口。

今ある間取りや、家族の暮らし方に合わせて、いろいろな作り方があります。

大切なのは、立派な店舗を作ることではありません。

保健所の基準を満たし、安全に商品を作れる場所を整えること。

そして、お客様が安心して受け取れる動線を作ることです。

次回は、実際のおうち工房の例を見ながら、

自宅のどこを、どのように工房へ変えられるのか」

についてお話しします。

和室、玄関、倉庫、庭の窓口など、それぞれの暮らしに合わせた工房の作り方をご紹介します。

「うちでは無理」と決める前に、まずはどのような選択肢があるのかを知っていただけたらと思います。

YouTubeチャンネルでは、おうちテイクアウトを始め、地域のお客様から愛されるお店へ育てるために必要な商品、工房、販売、発信、仕組みについて、全12話でお届けしています。

ぜひチャンネル登録をして、次回もご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

konayukiの直子でした。


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